恋の相談
愛の告白をなかなかできない男っていうのはどこにでもいるもんだ。 今おれとグラスを傾けているこの男もそうだ。顔は二枚目でスポーツ万能。普段は堂々としているくせに、自分の色恋関係になるとまるでだらしがない。 「好きなら早く告白すればいいじゃないか。お前だったらうまくいくって」 「でも……」 この煮えきらない態度。最初はおとなしく奴の話を聞いていたおれも、だんだんとイライラしてきた。 「いい加減にしろ! お前には一歩踏み出す勇気ってものがないのか? そんなんじゃいつまでたっても女なんて……」おれはあらん限りの弁舌を尽くしてそいつを説得しはじめた。なんとかおれの力で奴に告白させよう。おれはキューピッド役になるのだ。 一時間後、おれの必死の説得で奴のかたくなな心はやっとのことで動いた。 「そんなに言うんなら……分かった。思い切って告白してみるよ」 「よし! やっぱりやめたなんて言うなよ。なぁに、そんなにびくつくことないさ。中学生じゃあるまいし、何も初めての告白ってわけでもないんだろう?」 「そりゃ、今までに何度かは……」 「その時はうまくいかなかったのか」 「うまくいったさ。ただ、おれが告白した人って、……なぜかみんなすぐに死んじゃうんだ。最初の人はトラックにはねられ、二番目の人は原因不明の病気、三番目の人は……」 何だって! そんな理由があったとは。科学的とはまるで言えないが、万が一、告白相手が死んだらおれまで気分が悪い。おれはあわてて言った。「おい、やっぱり告白はやめた方がいいんじゃ……」 「何を言うんだ。せっかくその気になったのに。おれは言うぞ! 今おれが好きな人っていうのは、実は……」 熱っぽい視線を投げかける奴の目を見ながら、おれは心臓に鈍い痛みを感じていた。