「恋のジョージおじさん」別オチプロット 「哀れなふたり」編
(前略) 前半部でトムと別れた綾子は、そのまま無事にジョージと入籍、そして結婚式を挙げる。 盛大な結婚式の最中、トムが乱入、ウェディングドレス姿のの綾子をさらって逃走する。 両腕に綾子を抱えて全力で走るトム。 「離して!」イヤがる綾子はトムの腕の中で抵抗を続ける。 ホテルの正面階段の上まで来た時、綾子に顔を引っ掻かれたトムは思わず転倒。トムの腕から投げ出された綾子は宙を舞い、長い階段から転げ落ちる。暗転。 夢か現実かはっきりとしないもうろうとした意識の中、綾子はベッドに横たわっていた。 心配そうにのぞき込むジョージおじさんとトムの姿が目に映っては消える。暗転。 目覚めた時、ベッドサイドにはジョージとトムがいた。 「ここは……?」 「気がついたんだね。良かった」 「ジョージ……おじさん!」 綾子はたまらず、おじさんの胸に飛び込んだ。待ち望んでいたぬくもりを感じながら、綾子は泣き続けた。おじさんはやさしく綾子の頭をなでる。 「トムが……、トムがあたしのことを……」 「……許してくれとは言わない。どんな償いでもするよ」 「おじさんがそんなことを言う必要はないわ。償いをするべきなのはあなたの方よ!」トムをきっと睨み付ける綾子。オロオロとうろたえるトム。 「(再びジョージに向き直って)うふふ……。おじさんはやっぱりやさしいのね。……わたしにはやっぱりあなたしかいない。ジョージおじさん、早く結婚式の続きをやりましょう! そしてわたしと幸せに暮らしましょう!」 「……それはできない」 「どうして?」 「それは……私がジョージではないからだよ」そう言うと、男は綾子に鏡を手渡した。 それを覗き込んだ綾子はショックのあまり失神しそうになった。そこには40代の自分の顔があったのだ。 「驚くのも無理はない。君は20年の間、意識を失っていたんだ。……私はトムだよ。ここにいるのは私の息子だ」 「そんな……! じゃ、ジョージは? ジョージおじさんはどこ?」 「ジョージは……親父は死んだよ。数年前にガンでね」 「……!」わっとベッドに泣き伏せる綾子。 どうしたものかという表情でそれを見つめるトムと息子。 やがて息子は部屋を出ていき、病室にはトムと綾子だけになる。 トムは綾子を慰めようと言う。「……本当にすまない。だけど私はまだ君を愛している。君さえ良ければ私と……」 その途端にバァと顔をあげる綾子。見ると涙の跡などどこにもない。驚くトムをよそに綾子は高らかに笑い出す。 「アッハハハ! トム! あたしたちは大金持ちよ!」「!?」 「実はね、あたし、ジョージと入籍してすぐ、彼に莫大な生命保険に入るようそそのかしたのよ。ジョージと結婚したのは最初からお金目当てだったの。あんたになくてジョージが持っていたもの、それはお金だったのよ! でも、今あたしたちはかつてのジョージなんか問題にならないほどの大金持ちよ! 20年間の人生なんかどうでもいいわ!!」 その時、病室のドアが勢い良く開くと共に、数人の警官を引き連れて刑事が入ってくる。 「お前を保険金詐欺の容疑で逮捕する!」 「どういうこと?」驚いた綾子は咄嗟にトムの顔を見る。 刑事がトムの肩を叩いて言う。「どうです? これで分かったでしょう?」 トムはわなわなと震えていたかと思うと、右手を大きく振りかぶり綾子の頬に叩きつける……平手打ち?と思いきや、「ベリ」という音と共に綾子の顔から何かをはぎ取るトム。 それは特殊メイクのマスク。マスクの下からは21才の綾子の顔が現れる。 「(怒号)20年後なんてウソ。こいつはトム、私は正真正銘のジョージだ!」 愕然とする綾子。 側に来ていたトムと共にジョージは泣き怒り狂いながら叫ぶ。「お前がそんな女だったなんて! 信じてたのに!」 綾子は大勢の警官に囲まれて病室を後にする。 抱き合ってさめざめと泣く親子を残して。