今年はツイてた(別案)
大晦日の夜。年越し麻雀をやっていると、誰からともなくこんな話になった。 「この中で今年一番ツイてた奴って誰だろう?」 「もちろんおれだよ。何たって今のところ一人勝ちだからな。たかられるのがイヤで言ってなかったけど、今年はツキまくってたね。パチンコでも競馬でも勝ちまくったし。もう笑いが止まらないよ。わはははは」男は得意げに点棒をジャラジャラとを鳴らした。 「ふん。どうせたいした額じゃないんだろう? 今年一番ツイてたのはおれさ。実はおれ、宝くじ当たっちゃったんだ。三百万円だぜ。すごいだろう。わははははははは」男は得意げに当たりくじを見せびらかした。 「私はギャンブルにも負けてばかりだったが……そんな負けなど屁でもないんだ。言ってなかったけど先月親父が死んで、この一軒家は丸ごと私のものになったんだ。わはははははははははは」男は得意げに豪華な家具を見渡した。 「みんな違うな。一番ツイてたのはおれさ」 「なんでだよ。お前、今年は一番ツイてなかったくせに。だって会社をクビになって、借金で大変なんだろ?」 「ああ。だけどそれも今日で簡単に返済できそうだよ。いや~、てっきりみんな貧乏だとばかり思ってたぜ。わはははははははははははははははははは」男は得意げに出刃包丁を取り出した。