星の食糧事情
「さて、まもなく目的の星だ。到着前に調査報告を聞かせてもらおうか」 「はい、無人探査船が多くのデータを持ち帰っております。どの分野についてご報告しましょうか」 「そうだな。まず『食』の情報を頼む。我々の目的は、星の知的生命体と平和的に交流することだ。そのためにはまず同じ物を食べてみせて信頼感を与えるのがいい」 「探査機が料理のサンプルを持ち帰っています。食べてみますか?」 「人体に害はないんだろうな」 「はい。ただ、少量しか採取できなかったので、具体的にどんな料理なのかは分かりませんが……」 「……ペッ、ペーッペッペッ!! なんだこれは! こんなものをこの星の住民は食べているのか?」 「はい。『レストラン』と書かれた建物の入口に陳列されていたものなので、間違いないでしょう」 「なんて味気ない食事なんだ……。まぁ、我慢して食べるしかないか。モグモグ……」 「……!! 隊長、申し訳ありません! たった今、無人探査2号機が持ち帰ったデータによりますと、それは食糧ではありませんでした!!」 「ペーッペッペッペッペぺペーーーーッ!! なんだと!? ではこれは何なんだ?」 「それはただの見本品でした。現地の言葉で『ロウ』と呼ばれる物質でできています。入口でその見本を見て、現地人は何を食べるのかを決めるようです。も、申し訳ありません!」 「ペッペッ! ……まあいい。では、この『ロウ』とやらで作られた形と同じものが、この星の食糧というわけだな」 「そういうことになりますね」 『──ピピピピピピ! マモナク到着シマス』 「……おっ、着いたのか。時間もないことだし、報告はもういいだろう。では、皆に命令だ。この星の食糧に早く慣れておく必要がある。食糧を見つけたら、とりあえずどんどん口にするのだ。『ロウ』という物質で作られた見本が陳列してあるそうだから、どれが食糧かはすぐに分かるだろう」 「ハッ、了解しました!!」 かくして、一隻の宇宙船は東京タワーの3階 ──『ロウ人形館』に降り立った。