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必殺! 真空斬り
「頼んでいたものはできたか?」
「はっ、ご用意しております。これが透明染料でございます」
「これを塗れば、どんなものでも目に見えなくなるのだな」
「左様で」
「ご苦労。金はここに置く。ではもらっていくぞ」
侍はそう言うと、平賀源内のもとを後にした。
数日後。侍は大勢の剣客に囲まれていた。
「お主、この人数を相手に勝てると思っているのか。しかも丸腰ではないか」
「フフン。いいから遠慮せずにかかってこい」
「こしゃくな……!」小馬鹿にされて怒った数人が、刀を抜いて勢いよく斬りかかる。
しかし、侍は少しも慌てることなく右の拳を天に振り上げた。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……と、次々と宙を乱れ飛んだのは剣客たちの首。
全員を斬り捨てると、侍は誇らしげに叫んだ。
「フフフ……見たか! これぞ、必殺真空斬り!!」
そう。侍は刀に透明染料を塗っていたのだ。
「見えない刀では手も足も出まい」侍はクックッと笑いながら、その場を立ち去ろうとした。
「お待ちなせぇ」背後の声に侍が振り返ると、そこには男がひとり。
「なんだ、まだ残っていたのか」
侍はすかさず身をひるがえすと、男に向かって飛びかかった。
「必殺! 真空斬り!!」
だが、侍の透明な刀は文字通り何もない空を空しく斬っただけだった。かたや、相手の男の剣先は侍の身体を一瞬で斬り裂いていた。
「クッ……見事だ。き、貴殿の名は……?」
「私ですかい?」その男は仕込み杖をしまいながら答えた。「按摩をしております者で、……皆さんからは座頭の市と呼ばれております」
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あとがき
久々にシンプルなものを。小山ゆう先生の『あずみ』を読んだらチャンバラが書きたくなりまして……(前の『超極秘任務』の時もそうでしたが)。
世はスケルトンブーム。あなたならどこを透明にしますか?。
(2000/2/11)
ラストの台詞は、初出時はわりとふんわりと雰囲気だけで書いたのですが、その後ドラマを何本かちゃんと見て修正しました。
今もBSフジで毎週放送していますが、安定の面白さで凄いです。魅力のあるキャラクターは、時代を経ても色褪せないのだなぁとつくづく思います。今日も浅茅陽子と峰竜太がゲストの回を追いかけ再生で見ましたが、クライマックスの一番いいところ(対決シーン)だけを録画し逃して見逃すという大失敗をしました。大勢の敵と相対するシーンからわずか3分くらいを録画し逃したら、次はもう宿場を去っていくラストシーン。おそらくその間に活劇シーンがあったのだと思いますが、「最大の見せ場がわずか3分以下に凝縮されている」ことに驚きました。それが作品を引き締めている一因なんでしょうね。
(2020/6)
作品履歴
- 初出:「ショートショート・メールマガジン」第49号(1999年12月9日号)
- 2000/2/11:ウェブに公開
- 2020/6/17:新サイトに移転。縦書きに対応。あとがきを追加
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