洗剤惑星
「宇宙人は果たしているのか!?」 それを確かめるために、男はナスカの地上絵の近くで研究を続けていた。 ナスカの地上絵 ── 広大な地面に描かれた、宇宙からも見えるほど大きなその絵は、いつ誰が何のために描いたのか分かっていない。すべてが謎に包まれた存在だ。 だが「だからこそすべての謎を解く鍵はここにある」と男は確信していた。 宇宙人と会うための方法は、きっとナスカの地上絵に隠されているに違いない。男は強い信念のもと、人生を投げうって研究に没頭した。しかし、研究はなかなか思うようには進まなかった。 「地上絵はUFOの着陸場所である」という説にのっとって、あらゆる場所であらゆる信号を発信してみた。だが、空には何も現れなかった。 「消えかけていて宇宙人からよく見えないのではないか」と思い、地上絵をライトアップしてみた。だが、莫大な費用がかかっただけだった。 何の成果もあがらないまま、虚しく数十年が過ぎた。ある晩、男は星空に向かって叫んだ。 「宇宙の同胞たちよ! なぜ姿を現して下さらないのです? この広い宇宙の中で、地球だけにしか生命がいないとは到底考えられない。なのになぜ、私たちだけが仲間外れなんですか!!」 しかし、空からの返答は長い静寂だった。男は「ヌガァー」と叫び、スコップを片手に駆けだしたかと思うと、地上絵を片端から埋め始めた。ついに発狂したのだ。 男は幾日もかけてひたすら地上絵を消していった。まるで気に障る絵をビリビリと破り捨てるかのように。 作業がすべて終わった時、空のかなたからUFOの一団が現れた。だが、力つきて倒れた男がその光景を目にすることはなかった。 遙か遠くの星のテレビ画面。 地球の映像をバックに、女の宇宙人がにこやかに喋っている。 「奥様、ご覧下さい。『混ぜるな危険』の文字が消えました!」