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帰国の理由
ギョッとしたおれは、開きかけたドアをあわてて閉じた。
家の門の前でカップルがキスをしていたのである。
「こんな真っ昼間から……。まったく、最近の若い者は!」
しかし、このような状況だからといって、このままずっと待っているわけにはいかない。おれは仕事に出かけるところなのだ。
意を決したおれは勢いよくドアを開けると、真っ赤に頬を染めながらカップルの横を走り抜けた。
「なんでおれがこんな思いを……。こんな奴らは世の中から消えてしまえ!!」
おれの日頃の行いがよかったのが災いした。
おれがおれの職場である高校に着いてみると、生徒が半分しか出席していなかった。どうやら神様が願いを叶えてくれたらしい。
生徒が半分なら、教師も半分でいいことになる。おれは失業してしまった。なんでおれがこんな目に……。まったく、最近の若い者は……。
唯一救われるのは、米軍基地の騒音がここ数日パッタリと止んでいることくらいだ。
ところで大谷翔平は何で急に日本に帰ってきたんだい?
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あとがき
「数分後に理解した」というご意見多数。無事、理解していただけたでしょうか……?
あなたは街頭接吻肯定派? それとも否定派? という質問をマガジンでしたところ、寄せられたのは肯定意見や「実際はもっと凄い」というご意見ばかり。私も自由だと思いますが、2億人に迷惑をかけないように他人の家の前でするのはやめておきましょう。
(1997/4/21)
最終行の「野茂」を「大谷翔平」に変更しました。その他、「神様」と「失業の経緯」を追加し、考えオチ以外の部分で脳を使わなくても済むようにしました。
『ビバリーヒルズ90210』等のアメリカドラマの登場人物たちを見ていて、「人前でもやたらとイチャイチャしてるなぁ」と思い書いた話だったと思います。
「自分の周囲の常識こそが絶対」と勘違いしてこの男のように職を失わないよう、さまざまな国や文化のドラマを見て見聞を広げておきたいものです。僕は最近はBS11でイギリス、オランダ、フランスのドラマを見ていますが、各国のちょっとした文化の違いが垣間見られて面白いです。
(2021/5/11)
作品履歴
- 初出:「ショートショート・メールマガジン」第17号(1999年4月13日号)
- 1997/4/21:ウェブ公開
- 2021/5/11:新サイトに移転。縦書きに対応。修正。あとがきを追加
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